日本各地で続々と新しい店舗ができており、若者を中心に注目を集めている「シーシャ」。インド・中東からその古い歴史は始まり、欧米でも文化として浸透し、アジアまでその人気は広まっています。非合法・怪しいといったイメージを持たれたり、身体にどれくらい害があるのか分からないなど、シーシャに対する知識はまだまだ日本に浸透していないように思われます。この記事では、シーシャの歴史から、楽しみ方や日本で流行している理由、健康への害など、幅広くシーシャに関連する情報を分かりやすくお伝えします。

シーシャ(水たばこ)とは?

シーシャとは、日本で水煙草(水たばこ)と呼ばれる喫煙器具です。水をフィルターにして煙草の煙を吸うことで、紙巻き煙草に比べて喉への負担が少なく、冷たい煙を喫煙することができます。一度の喫煙で1時間〜2時間以上楽しむことができるのも特徴の一つです。使用する煙草(フレーバー)には様々な香料と蜜で味付けがされており、フルーツや花・お菓子などといった多種多様な味と香りを楽しむことができます。

シーシャの仕組み、吸い方

シーシャの仕組みの写真
https://www.jti.co.jp/tobacco/knowledge/variety/shisha/index.html

シーシャのパーツを大きく分けると、トップ・ステム・ボトル・ホースの4つとなります。トップに詰められたフレーバーを炭で熱し、出てきた煙草の煙とシロップの水蒸気がステムを通ってボトルまで行き届きます。ボトル内の水はフィルターの役割を担っており、煙が冷やされ、ホースを通して吸うことで喉あたりの柔らかいなめらかな煙を味わうことができます。炭の火力を上げればフレーバーがよく熱され、煙も多くなりますが、焦げてしまう場合もありますので、定期的に(15分〜20分に1度)炭替えを行うのが一般的です。

シーシャは深呼吸をするように大きく深く吸います。吸った煙を肺に入れたあと、口を大きく開けて吐き出します。吐き出すときはふぅーと細く吐くのではなく、あくびのように煙を漏れ出させると、より香りを楽しむことができるようになります。シーシャを短時間で何回も吸いすぎると酸欠になってしまいます。適度に休憩時間を取って、1分間に3〜4回吸うのがちょうどいい目安です。シーシャはあくまでリラックスするためのものなので、飲み物を飲んだり雑談したり、ゆっくり楽しむとよいでしょう。

シーシャの歴史

シーシャの起源は諸説あり、現トルコのオスマン帝国やインドのムガル帝国での発祥が有力です。16世紀頃にシーシャが誕生し、当時は上流階級のみの嗜好品で高級品でした。ムガル帝国がイギリスの植民地となり、イギリス商人によって17世紀以降欧米に広まっていきました。オスマン帝国も中東地域やアフリカを支配下に収めており、シーシャ文化の基礎を築いたと言われております。アラブ諸国からシルクロードを通って中国にも伝播され、アジアにも広がっていきました。味付きのシーシャ用フレーバーが発明されたのは割と近代で、1989年にエジプトのナハラ社が世界で初めてフレーバーを作りました。そう、フレーバーの中でも一番有名な『Two Apple』です。

日本での流行とその理由

シーシャは日本国内でも人気が高まってきており、非喫煙者でも楽しむ人が増えてきました。日本初のシーシャ屋は、2005年にオープンした『下北沢shisha 1号店』さんです。それ以降徐々に都内を中心に店舗が増えていきますが、直近2〜3年での店舗数の増え方には目を見張るものがあります。都内に限らず日本各地でシーシャ屋が続々できており、現在都内だけでも100店舗を越えています。その業態も様々で、シンプルなシーシャカフェから、お酒も提供するシーシャバー、ボードゲームなどができるアミューズメントシーシャ、スタッフがコスプレをしているコンセプトシーシャ、ガールズバー×シーシャといったお店まで、幅広く展開されています。全国のシーシャ店舗情報は別記事にて詳しくまとめております。

店舗数がここまで拡大してきている背景には、若者(20代〜30代)を中心に認知が広まり、普段使いされるようになってきたことが挙げられます。1990年代以降に生まれた世代はZ世代と呼ばれ、彼ら彼女らの特徴的な消費行動に一因があるのではないかと筆者は考えます。生まれたときからインターネットが身の回りにあった「デジタルネイティブ」で、スマホを日常的に使いこなし、SNSにも慣れ親しんでいる世代です。「モノ(商品)」よりも「コト(サービス・体験)」など、娯楽や経験をより重視する傾向があるとも言われています。内装がおしゃれなお店が多く、吐き出される煙の量も紙タバコに比べて多いシーシャは、写真映えするコンテンツとして受け入れられ、SNSでの投稿が多く見られるようになりました。また、今の若者たちの「チル」文化にもよくフィットし、大人数でガブガブお酒を飲むのではなく、気のおける少人数の仲間で卓を囲い、リラックスしながらシーシャとお酒を楽しむことが一つの選択肢となりました。

シーシャは違法?身体への害は?

紙たばこの写真
https://toyokeizai.net/articles/-/294280

シーシャは違法ではありません。シーシャは基本的にたばこ葉を使用しているため、紙たばこ同様20歳未満の方の使用は法律により禁じられています。シーシャ店でも年齢確認のために、来店客に身分証の提示を求めることがあります。また、お店でシーシャを提供するには「たばこ小売販売業許可」が必要となり、無許可で営業してはいけません。シーシャ屋開業に関する詳しい情報は、別記事にてまとめております。

シーシャは身体に悪いのか、紙たばこよりも害があるのかないのか、気になる人が多いかと思います。結論から申し上げると、まだまだ研究が進んでおらず、どちらとも言い切れないというのが現状です。シーシャで使われるフレーバーは、一般的にたばこ葉を煮沸処理しニコチンとタールを落とすという製造工程を経ます。また、ニコチンは水溶性であるため、水をフィルター代わりに煙を吸うシーシャは、紙たばこよりも健康への害が少ないと言われることがあります。一方で、シーシャは長時間の喫煙となるため、紙たばこ以上の健康被害を受けると言及している海外の論文もあります。やはり無害とは言い切れないため、吸いすぎには注意し、嗜好品の一つとして適度に楽しむのがよいでしょう。

シーシャのフレーバーについて

シーシャフレーバーの写真

シーシャの香りと味を決める大きな役割をフレーバーが担っています。シーシャフレーバーは、たばこ葉を煮沸処理し、シロップや糖蜜で味付けし、煙を出すためのグリセリン等を配合して作られます。煮沸処理をしないものはダークリーフと呼ばれ、ニコチン濃度が高く、比較的重たい煙が出る上級者向けのフレーバーとなります。たばこ葉以外を使用したノンニコチンフレーバーも日本国内では多く流通しており、サトウキビの葉やフルーツを使用したものなどが見られます。世界各地に多くのフレーバーメーカーが存在し、それぞれ多種多様な商品を展開しています。定番のフルーツやミントから、お菓子、スパイス、飲み物、フローラルなど、数え切れないほどあり、最近ではポップコーンやピザなど、食べ物系フレーバーまで登場しています。日本でも有名なシーシャフレーバーメーカーとそれぞれの代表的な商品・特徴は、別記事にて詳しくまとめています。

フレーバーの奥深さの一つに、ミックスできるという点があります。フレーバー単品で吸う人もいますが、ほとんどの人はミックスされたシーシャをお店で吸っているかと思います。定番なものだと、フルーツ×ミントや、フルーツ同士のミックス、アクセントにスパイス系を入れるなどがあります。別々のフレーバーをミックスして味わったことのない香りを体験できたとき、なんとも言えない興奮を感じることができます。ミックスの醍醐味として、再現シーシャという楽しみ方があります。一般的な食べ物や飲み物の味を、フレーバーをミックスして再現する遊びのことで、豊富な知識と高度な技術が必要となります。筆者が見てきたものだと、オロナミンC・ガリガリ君・メロンソーダ・杏仁豆腐などなど、再現度が高いシーシャを吸ったときは感動すらおぼえます。

さいごに

最近よく耳にする「シーシャ」の基礎知識をざっくりとまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。シーシャは本当にまだまだ奥が深くが、ここに書かれていることはほんの一部でしかありません。ぜひ自分で色んなお店に行って様々なシーシャを吸ってみたり、色んな店員さんと会話してみたり、自分で作ったりしてみながら、少しづつシーシャの奥深さ・壮大さを実感していただければと思います。この記事がささやかながらもその旅の入口になっていれば、幸いです。